是枝裕和監督の「空気人形」

新宿バルト9にてファーストデイに1000円で観てきました。是枝監督の作品はずっと観てきたし、今回は久しぶりにARATAを起用していて、さらに韓国の人気女優ペ・ドゥナを主演に迎えるという見所満載な一本だったわけですが、その大きく膨らんだ期待を裏切らない文句なしの快作でした。
業田良家の短編コミック「ゴーダ哲学堂 空気人形」が原作で、冴えない男(板尾創路)と暮らす空気人形(ペ・ドゥナ)にある日突然、心が宿ってしまうという、かなりぶっ飛んだ設定の物語です。こんな話をドキュメンタリー出身の是枝監督がどう調理するんだろう、大丈夫か?と少々案ずる気持ちもありましたが、蓋を開けてみれば、ファンタジーでありつつ、市井の人間の群像劇であり、シチュエーションコメディーであり、さらにサイコスリラーの要素すら見られる度量のでかい作品になっていました。
上映開始5分で人形は心を持ち、その5分後にはもうすでにレンタルビデオ屋でアルバイトをしているという(笑)、おそるべき力業で物語が展開し、ARATA扮する同僚の店員とのシチュエーション・ラブ・コメディーに転がり込んでいきます。ARATAはお得意の「どこか影を持つ男」を抜群の雰囲気と安定感で演じています。ペ・ドゥナも難しい役どころをコミカルかつ憂いのある演技、そして比類なきキュートさを遺憾なく発揮し、観客の心を鷲づかみにしていました(私だけじゃないでしょう?)。

とびきりファンタジックな主人公が登場するにもかかわらず、その周りを囲む人間たちはどこにでもいるような人たちばかり。皆それぞれの悩みを抱え、冴えない日常を過ごしている。一見上手くいっていそうな人でも、実は他人には見せない暗部を抱えている。完璧な人間なんて一人もでてきません。ファンタジーな主人公をこういった日常の世界に溶け込ませて、人間の弱さや日々の私たちの暮らしを見せるというのは是枝監督らしいアプローチですし、すごく成功していると思いました。
久しぶりに野心的な作風で満足感を味わうことのできる映画を観たような気がします。いい映画でした。
空気人形 予告編
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