横浜聡子監督の「ウルトラミラクルラブストーリー」(ちょいネタばれ)

何とか時間を作って横浜聡子監督の「ウルトラミラクルラブストーリー」を観てきました。この映画は個人的に見所が多くて、ずいぶん前から楽しみにして公開の日を待っていました。横浜監督は前作の「ジャーマン+雨」(自主制作だったんですね)で日本映画監督協会新人賞を受賞した、まだ30歳くらいの若い女性監督。今作は初めての商業映画ということで、主要キャストには松山ケンイチ、麻生久美子と売れっ子役者を配しています。
映画の舞台は青森県(監督の故郷)。全編に亘ってゴリゴリの津軽弁が繰り広げられ、東京育ちの私なんかには会話のディテールはほとんど分かりません。「ジャーマン+雨」で日本映画史にも残ろう最強のヒール・ヒロイン「よし子」を産み落とした横浜監督ですが、今回の主人公もぶっ飛んでいます。松山ケンイチ扮する陽人は、ちょっと知的障害ぎみな青年。両親はおらず、近所に住むおばあちゃんに見守られながら、一人で農業(といってもできるのは虫食いの野菜ばかり)をして暮らしています。子供のように無邪気な性格で、周囲に迷惑をかけることもしばしば。時には、野菜を買いにきたお客さんに、キャベツやトマトを投げつけてケンカをすることも。しかし地元の人たちには疎まわれながらも愛されています。
そんな陽人の住む町に、東京から恋人を交通事故で亡くしたばかりの町子(麻生久美子)がやってきます。幼稚園で保母さんとして働く町子は、じゃがいも掘りの手伝いをしている陽人と知り合いになります。町子先生に好意を抱いた陽人は、なんだかんだと彼女に近づくようになります。しかし町子は陽人の破天荒な言動にちょっとひいている感じ。そんな二人のラブストーリーは、とある出来事がきっかけで、とんでもない方向へ転がっていくのです。

中盤からの物語のぶっ壊し方はさすがです。さすが横浜監督です。こういうのを待ってました、というくらい見事に色んな枠とか既成概念とかを破壊してくれています。映画づくりにおける暗黙のルールやロジックを無きものにしているため、見慣れないものを観ている感じ、なんか不安なんだけどワクワクする感じ、というオーラみたいなものが全編から漂っています。
期待通りな反面、ちょっと意外な、前作とは異なるテイストも感じました。「心臓止まっても町子先生と一緒にいたい。だから僕は進化する!!」というのがこの映画のキャッチコピーなんですけど、この他にも、頭がなくなってしまったままの町子の元恋人や、陽人と町子の生物の進化の歴史についての会話とか、なんか肉体とか精神について観念的なものを非常に強く感じました。ぱっと見は支離滅裂なように陽人に暴れまわらせておいて、実は裏では観念的なテーマをもっている作品だと思います。(これはちょっとネタばれになってしまいますが)じゃなかったら、最後に陽人の脳みそを熊が食べちゃうなんてことにはならないはず。それじゃなかったら、監督はただのグロとかカルト趣味ですよね。
個人的に楽しみにしていたARATAは思いもよらぬ姿で登場しました。おいしいような残念なような、けどこの映画の中でも一番象徴的なシーンだったと思います。思えば、ARATAと麻生久美子は「青い車」以来、再びの恋人同士の役。皮肉にも今回はARATAが死んでしまうのです。
そのほか脇を固めるノゾエ征爾、藤田弓子、原田芳雄、渡辺美佐子らもいい演技をしていました。音楽はまたしても大友良英。主題歌は100Sが歌っていました(衝撃のラストシーンに慄く観客のテンションに見事フィットする勢いのある楽曲)。まあ、考えずに観ろと、そして楽しめと、そういう映画じゃないでしょうか。おすすめです。
ウルトラミラクルラブストーリー予告編







こんにちは!fabさん☆
コメントどうもありがとうございました!
ARATAさんの役はびっくりでしたね。
ヨウジンとカナメの噛み合ってるよなナイような不思議な会話も印象に残ります。
身体と声だけの登場なのに、あの存在感は凄い!さすがです!