ありん堂の草餅を食べて上林を想う
近所の和菓子屋さんで草餅を買いました。ありん堂という小さなお店です。私が毎朝店の前を通ると店主のおじさんが、店の前に水を撒いて、お菓子を入れるガラスケースを水拭きしています。和菓子屋さんは朝早くから仕込みをやらないといけませんから、この寒い時期はさぞかし大変でしょう。立派だなあと思いながら毎日見ていました。
草餅はヨモギの苦味と餡の甘さのバランスが最高。春を感じる味です。
草餅といって思い出すのが、上林暁の随筆集「草餅」です。絶版になっていて荻窪の古本屋などでずいぶん探しましたが、なかなか見つからず、結局「日本の古本屋」というサイトを利用して神保町の古本屋から取り寄せました。
「草餅」は上林が脳出血で半身不随となった晩年、妹の口述筆記によって書かれた文章です。体の不自由に鬱屈することなく、日常のささやかな暮らしぶりを穏やかな筆致で書き綴っています。江戸時代の作家・曲亭馬琴は目をつぶしてもなお口述筆記によって超大作「南総里見八犬伝」を書き上げました。体が書けなくなっても、それでも作家。作家の魂ってすごいなあと思います。
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