クラウド・コンピューティングを体感できるサービスと端末
Webの世界はファッション業界を凌ぐほど「流行」に敏感な業界と言われています。昨年は「Web2.0」なんていう言葉が流行して、ブログやWeb関連書籍で大いに語られました。Web業界の外でも、「DoCoMo2.0」なんていう風に言葉尻を変えて広く波及していたので、一般の人でも見たこと聞いたことがある方は多いと思います。
こういう言葉は、往々にして、ある企業や団体などがマーケティングのために作り出し、意識的に伝播を促して市場のムードを盛り上げているという場合が多く、それらは「バズワード」などと呼ばれます。Web2.0という言葉が、あれほどまでの凄まじい勢いで業界内外に広まっていったのには、そういったマーケティングの側面が存在していたことは疑いようのない事実でしょう。
そんな何かと熱しやすいWebの世界で、最近特によく耳にする言葉に「クラウド・コンピューティング」というのがあります。この言葉も、そもそもはグーグルのCEOの発言から端を発していて、正しくバズワードであることには間違いないのですが、そのビジネス的な側面はとりあえず置いておいて、この「クラウド」という概念は私たちが日常的に接しているコンピュータやネットの価値観を大きく変える可能性を秘めていて、ちょっとワクワクさせられます。
クラウド・コンピューティングとは、簡単に言ってしまえば、普段私たちがパソコンや携帯電話などで使用しているアプリケーションをネット(クラウド=雲)上に置いて動かしてしまおうという考えで、そうすることによって私たちはネットに接続する環境と基本性能を備えたブラウザさえあれば、雲(ネット)から降ってくるアプリケーションを利用できるようになります。
今までのように、OSの種類やバージョンを気にする必要は無く、パソコンのスペックも問題にならないどころか、高性能なブラウザを搭載した携帯電話ですら、ネットから降ってくるサービスを利用できるようになるのです。その結果、端末同士の壁が取り払われ、それぞれ独立して使われていた端末間で、同じサービスを使用してデータを共有し合うことが可能になります。
このようなクラウドの発想は、別段新しいものではなく、古くから存在していましたが、通信速度やサーバースペックなどが、まだまだ貧弱であったため実現には至りませんでした。技術が進歩して、周辺の様々な環境が整ってきた現在、クラウド・コンピューティングを体感できるサービスや端末が姿を現してきています。もしかしたら、あなたがもう使っているサービスが実はクラウドかもしれません。
クラウドを体感できるサービスと、クラウドに向いた端末をいくつか紹介したいと思います。百聞は一見にしかず。実際に使ってみることで、クラウドとはどんなものか理解することができると思います。
クラウドなサービス
まだまだローカルアプリのような快適・確実な動作には及ばない部分もありますが、数年前のWebアプリと比べれば飛躍的に操作感は向上しています。またWebの特性を活かした"共有する"という要素が含まれていることもクラウド・サービスによく見られる特徴です。
- グーグルマップ
- 衛星写真やストリートビューと統合した地図アプリ。Ajaxの技術でローカルソフト並みに快適に動作します。
- Gmail
- 大容量で快適な動作のウェブメーラー。ラベルを使った管理のしやすさと検索の早さに定評があります。
- Evernote
- パソコンと携帯電話でメモを統合するウェブサービス。どちらの端末から編集してもデータはネット上にあるため同一性が保たれます。
- Flickr
- ネット上に写真を保存できるオンラインストレージサービス。指定した写真を公開し、他者と共有することもできます。
- グーグル・ドキュメント
- ネット上で動作するワープロ、表計算、プレゼンテーションのアプリ。作成した文書の保存・管理もネット上で行えます。
- フォトショップ・エクスプレス
- 高性能画像編集ソフトとして知られる「フォトショップ」のWeb版。画像のレタッチがWeb上で快適に行えて、さらに編集した画像をFlickrのように保存・公開できます。
クラウドに向いた端末
全ての端末で同じ作業が行えるわけではありません。それぞれの端末に適した利用が可能にはなりますが、端末毎に利用の制限は生じます。そういった意味でパソコンはやはり、オールラウンダー的な存在で、スマートフォンなどのように、どんなに優れたインターネット端末が現れても、パソコンが世の中から姿を消すことは無いでしょう。
- ネットブック
- クラウドなサービスが普及すれば、パソコンのスペックは、一般には今ほど求められなくなります。ブラウザさえ搭載されていれば、ネットから様々なアプリをサービスとして利用できます。現在、低価格・低スペックなネットブックの売上げが好調なのは、ひょっとしたらクラウドが呼び水となっているのかもしれません。
- スマートフォン
- iPhoneやブラックベリー、W-ZERO3などに代表される高性能な携帯電話は、最もクラウドの世界観を体感しやすい端末でしょう。パソコンで利用しているサービスを外出中に利用することができます。
- テレビ
- ネットに接続できるテレビでは、クラウドが体感できます。入力には不向きな為、閲覧を目的とした使用方法が中心になります。
- ゲーム機
- Wii、Xbox360、PS3、ニンテンドーDS、PSPなどのゲーム機がネットの接続機能をもっており、クラウド端末として利用できます。
Web業界の人間のクラウドに対する意見は賛否両論あり、「世の中のあらゆるアプリケーションはクラウド化する」と熱っぽく語る人もいれば、「古い概念の焼きまわしに過ぎず、単なるバズワード」と切り捨てる人もいます。
バズワードの側面は誰も否定しないにして、いままで技術的に実現しなかったものが、周辺の技術進歩により、少しずつ現実味を帯びてきていることは事実でしょう。紹介したサービスや端末がその一部です。それらのサービスや端末についても、まだまだ問題点や課題をそれぞれ抱えていますが、これから徐々に解決されていき、もっと使いやすい形で私たちに提供されるようになると思います。クラウドがどこまで広がっていくのかはまだ分かりませんが、少なくともローカル環境に縛られていたこれまでの状態は、今後変化していくのでしょう。
クラウド・コンピューティングについてもっと詳しく知りたい方には、西田宗千佳著「クラウド・コンピューティング」をおすすめします。Web初心者でも読めるように平易な解説ながら、クラウドについて視野広く書かれています。







