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「ただマイヨ・ジョーヌのためでなく」ランス・アームストロング

ただマイヨ・ジョーヌのためでなく

この「ただマイヨ・ジョーヌのためでなく」は、自転車ロードレース界の伝説的人物ランス・アームストロングが自身の半生を書いた自伝書です。自転車レースの最高峰と呼ばれ、全ての運動競技の中でも最も過酷と言われるツール・ド・フランスで、前人未到の7年連続総合優勝という偉業を成し遂げたのがランス・アームストロングです。

自転車ロードレースは日本では馴染みの薄い競技ではありますが、ヨーロッパでは大変人気が高く、ロードレーサーはサッカー選手と並んで、子供達の憧れの対象でもあります。そのなかでもツール・ド・フランスは、熱狂的なファンが多く、知名度や開催規模からみて世界屈指のスポーツイベントと言われています。また自転車選手にとっても、生涯に一度は走ってみたい舞台と言われ、自転車競技の世界ではオリンピックよりも大きな存在だと言えます。

そのツールを圧倒的な強さで7年連続制覇したランスに、多くの自転車ファンは興奮し、感動しました。しかし、ランスのその輝かしい偉業の背景には、壮絶で過酷なドラマがあったのです。そして、だからこそ人々は、ランスの走る姿を見て、熱い感動を覚えるのでしょう。

ランスはロードレーサーのエリートとして、右肩上がりの実績を積むなか、25歳の若さで癌に侵されました。睾丸癌は肺や脳にまで転移しており、生存率は20%以下という最悪の状況でした。ロードレーサーとしてこれからというときに、突如として襲ってきた病魔。ランスは自分の運命に落胆しましたが、やがて病気と闘う決心をし、ついに癌を克服することに成功しました。

しかし、病気に打ち勝ったランスは、すぐさま競技に復帰できるわけではありませんでした。長い闘病生活の結果、鍛え上げられた肉体はやせ細り、強靭な体力は完全に失われてしまっていたのです。そして、過酷な練習をすれば再び病魔が帰ってくるのではないか、という不安と恐怖から、彼は自転車に跨ることが出来ず、無気力状態となってしまったのです。

そういう喪失の状態から、もう一度自転車に跨り、最高の舞台ツール・ド・フランスで優勝するまでに至ったランス自身の姿が、本作では克明に描かれています。

彼は自分の運命を見限らず、人生を捨てませんでした。人間、本当に死んでしまうまで、希望は絶対にあるし、何が起こるかなんて誰にも分からない。明日にはまた輝けるかもしれない。強く生きていく勇気を、この本は読むものに与えてくれます。

100年に一度の大不況や社会不安のなか、先が見えずに絶望を感じる人も少なくないでしょう。いつの時代にしろ、全部諦めてしまいたくなるときが、どんな人にもあると思います。そういうとき、ぜひ読んでもらいたい一冊です。

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小林 聡
東京都八王子市出身

杉並区阿佐ヶ谷を中心に活動しているフリーランスのWebプロデューサー。趣味は読書と自転車。ファブズラボ代表。詳しいプロフィールはiddyをどうぞ。

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