「聖ヨハネ病院にて」上林暁
阿佐ヶ谷会のメンバーの一人、上林暁の作品を読んでみようと思い書店を探し回ったのですが、結局見つけられませんでした。
ほとんどの本が絶版になってしまって、書店在庫も無くて注文もできないという状況。ちょっと寂しい気持ちになりました。
結局、アマゾンで注文したのは「聖ヨハネ病院にて」という新潮文庫から出ていた短編集。表題作の「聖ヨハネ病院にて」をはじめ「薔薇盗人」など作者の代表的な短編が選りすぐり7編収められています。
「聖ヨハネ病院にて」というのは精神を患った妻を介添えするため、病院と家を行き来する生活を続ける夫の話。妻にやさしく、献身的になろうと努めるが、うまくできない自分を自嘲感漂う筆致で描いた作品です。上林という作家は、筋金入りの私小説作家として知られていて、この作品に至っても作家自身の介護生活が物語のベースになっているそうです。
短い作品ですし、狭い世界の話なのですが、なんとも人間のささやかな暮らしにやさしい光が当てられたような、慎ましやかながらいつまでも続いていく人生をやさしく見つめるような、とても充実した作品でした。舞台は戦時下、貧しい支給品(缶詰や芋など)に一喜一憂する妻と夫の豊かさよ!苦労が多いと溜め息をつくことすらも愛しく思わせる作品。お勧めです。








